フ ランスの都市再生(Réhabilitation)について
       (宇田英男:日仏景観会議・倉吉へのG.ヴュルステゼン提供資料などより)

レアビリタシオンは、我が国では同じ言葉を身体運動機能回復(リハビリ)と言う意味で用いていますが、本来、元々あった権利、名誉、地位などを回復するこ とです。上に述べたように1980年代以後フランスの建設の中心となったレアビリタシオン(建築仲間の使う言葉)は、古い建物を壊して作り直す再開発(レ ノヴァシオン)に対立す る概念で、古い建物を生かしながら、現代の生活に適応させることです。
 これは環境、歴史、遺産の意識が高まった時代思想の結果ですが、そのきっかけは幾つか考えられます。その 一つ、戦後復興時代に 大量に作られた住宅大団地が古くなり、特にエネルギー危機に際して断熱など建物の性能が問題になったこと、またこれらの団地に移民を含め低所得者が多く住 むようになり、団地の社会環境が悪化し、一部で暴動などが起ったことがあります。前者の問題に対しては、断熱・気密・防音改善、住居単位の拡大、エレベー ターの設置など物理的対策が行われ、レアビリタシオン例として、我が国にも紹介されました。
 住民社会環境の悪化については、住宅大団地だけではなく、都市中心の疲弊した古い地域でも、フランス各地で起きている問題で す。1981 年、政府は「地区社会開発のための国家委員会」を作り、建物の刷新に限定されない真の社会開発のための総合的取り組みを始めました。地方分権以後は国家が 地方自治体と「都市の契約」を交わし、強力な国家指導と地方地方の特殊性に基づく様々な手法とを組み合わせ、地域の自発的な改善を目指しています。これは 「都市のプロジェクト」と呼ばれる現在進行中の多くの地方都市再生事業となっています。目的達成のため種々の制度が組み合わせて用いられる場合が多いので すが、レアビリタシオンの中心となっている最も古い制度は「保存地区」の法律です。

I.    保存地区
1.  保存地区とは
 現在、建築担当の施設省と遺産担当の文化省が共同して所管する保存地区の制度は、遺産を保護・価値付けながら、地域の人口、社会、 経済、文化的 多様性を考慮して都市的機能をいかに向上させるかという複雑な役割を持っています。都市が生き、かつ、それぞれ多様であるためには古い都市部分と現代の力 動的な都市一般現象とを一体に取り扱う必要があります。

 このため、保存地区は遺産の保護・価値付けの道具であると同時に、独立した都市計画文書でもあります。1999年時点でフラ ンス全国に 91の保存地区があり、総計面積は6,000ヘクタール、総人口は約80万人で、指定待ちの数は約20、年2〜3地区の割合で増えています。
 前に述べたように、1913年の歴史記念建造物の保護の法律が、1943年に、その周辺の保護にまで拡大されましたが、 1962年の保存 地区の法律は、保護を地域全体にまで適用します。この法を推進して「マルロー法」と名を残した当時の文化相、アンドレ・マルローの言葉は、「前世紀、各国 の歴史遺産は歴史記念建造物で出来ていた。それは彫刻や絵画のように保護された。国家は時代の主要作品としての名品建築を保護したのである。しかし今日、 諸国は名品だけでなく、過去の存在そのものを重視するようになった。これが肝心な点で、過去の魂があるのは名品だけでなく、孤立した名品建築は死んだ名品 であることに気が付いたのである。」
 法の適用の具体的方策は;発掘・保護すべき都市遺産の特定。不動産修復と、社会、経済、機能的な都市問題を総合した保存地区 都市計画書。都市遺産の修復と価値付けの指針を示す保護・価値付け計画(PSMV)を作ることです。

2.代表的事業、マレ保存地区
 保存地区の初期の目玉事業はパリのマレ地区でした。

 中世起原のパリの中心部の東、フイリップ・オーギュストの城壁を跨ぐマレは、16世紀に新しい市街地として開発され、17世 紀初頭アンリ 4世が作ったロワイヤル広場(今日のヴォージュ広場)を中心とする高級住宅地として、ルイ14世時代に最盛期を迎えます。多くの著名人が立派な館に住み、 中でもここで一生を送ったセヴィニェ侯爵夫人は有名です。
 その後、拡大するパリ市域に囲まれたマレは、次第に衰退し、昔の名建築も用途改変で、水平・垂直に建て増され、高密な庶民の 建物の中に埋 まる姿になりました。「マルロー法」が作られた頃は、沿道建物の崩壊を防ぐため道路の上に木材の梁を渡した場所もあり、薄汚れた建物が建て混んだ陰惨な不 良地域になっていました。
 マレ地区の保護・価値付け計画の立体的説明図では、建物や街区が、価値のあるもの、特徴あるもの、普通のもの、価値のないも の、改変すべ きもの、の5段階に色づけされています。事業は長年に亘り、名建築の増設部分を外して昔の姿に帰され、一方、改変すべきブロックは地下駐車場付集合住宅に 変えられたりしました。
 今日マレの姿は全く変わり、名建築の多くは公共用途となっています。アンリ四世の宰相シュリ館(マレ関係機関)、ラモワニオ ン館(パリ歴 史図書館)、筋向かいのセヴィニェ侯爵夫人の住んだカルナヴァレ館(オースマン時代以来博物館)、彼女が幼時を過ごしたクーランジュ館(ヨーロッパ会館) など、外にも重要な公共施設が多いのですが、日本人の観光コースに入ったのは、ピカソ美術館になったルイ14世時代に塩税請負人が住んだサレ(塩)館で す。商業や文化活動も盛んになり、パリの中でも特色ある地域になりました。
 しかし、マレ保存地区の結果については幾つかの問題点が指摘され、その後の保存地区政策が見直されることになります。 ま ず、名建築の博 物館が多くなり、全体として博物館的都市(ヴィル・ミュゼ)の色彩が強まったこと、また観光や芸術関係の商業が卓越して生活色が減少したことの外、最も重 大な問題は住民の変化です。事業が進むにつれ歴史色ある高級住宅地マレの不動産ブームが起きました。梁が天井に露出した昔ながらの住居に少し手を入れて化 粧すると、所謂「マレ・スタイル」として高く売れるので、中小の不動産業者が違法に近い手段で低所得者や老齢者の住居を買い漁り、貧乏人の多くが地域から 追い出されたのです。住民の多様性が減り、職人の仕事場や買い周り商店も姿を消し、流行を追う富裕層と観光客の地域に変わる恐れが出て来ました。

3. 今日の保存地区政策
 保存地区制度は80年代のレアビリタシオンの考え方で変わって行きます。

 古い都市中心の機能的・社会的側面を認識し、多機能、共存、都市性の場としての歴史的役割を保存すること。周辺地域の住宅・ 商業政策によ る保存地区内の商業、サービス、手工業の暫進的劣化を防ぐこと。再開発と言う名は使わないものの、未だに行われている、高速自動車路、高層建物、大面積店 鋪、過大な駐車場など、形態的、機能的尺度を無視した再構成計画を避けること。事務所、商業、観光など一部機能の肥大による失敗を防ぎ、所謂装飾都市、博 物館都市に陥ることを避けることです。
 これらの反省の上で、保存地区制度は今日でも古い地域や都市中心の遺産と都市計画を同時に扱う唯一の方法です。保存と価値付 け計画 (PSMV)は保存地区内での土地利用計画(POS)に代わる一体的な都市計画図書であり、住宅、雇用、サービス、交通に関して地区内の住民の要求の総体 を規定し、地域の固有性やイメージを尊重すると共に、機能性や用途を考えます。
 建築所管省と都市計画所管省が担当する保存地区制度は、都市計画権限が地方自治体に移った地方分権以後も、国家事業として存 続し、新しい 権限配分として、国家が当政策の質と永続性の保証者として主体を維持するものの、保存と価値付け計画の作成に当っては自治体が大きく関与します。しかし計 画の作成の費用は殆ど国が負担し、保存地区国家委員会が評議します。地方分権以後、保存地区の数が大幅に増えました。

4. 保存地区の地方分権化
 地域で保存地区事業に介入するものは、

自治体;自治体議会審議による承認がなくては、保存地区は作れません。
フランス建物建築家(ABF); 文化省が任命し、地域の記念建造物やZPPAUPを担当するABFは保存地区でも中心的存在で、保存と価値付け計画作成で担当の建築家・都市計画家を助 け、結果として第三者対抗力を持つこの計画が確実に執行されることを監視します。
県施設局;地方分権で自治体の所管となった都市計画や建設許可を技術面で援助する 県施設局は保存と価値付け計画作成と実施面で協力します。
保存と価値付け計画担当建築家;保存地区政策所管の省の資格審査を経て自治体の長から任命された建築家・都 市計画家がPSMVを作成します。

●地方での保存地区事業の協力者として;文化事業地方局の機関(歴史建造物地方局。遺産保存地方サービス。考古学地方サービ ス。地方民俗学 者。)環境地方局(保存地域内の環境と景観の質に付いての配慮の監視。)遺産に関して権限のある諸団体(遺産保存協会や学識経験者団体。)保存地区地方委 員会(土地利用計画(POS)作成時の作業グループと同じ役割。)などがあります。

5. 保存地区の指定と境界の確定
 保存地区の境界確定の基準は、歴史的核に限らず、都市遺産を現実に構成するもの全てを、また、明らかに表現や価値付けに関係する周辺部や都市機能上適切 な部分を含めます。このため、都市全体の十分な予備調査が必要です。また保護地区が制定されると、この部分に微妙な変化や時には制御できない問題が起るこ とがあり、この対策は都市全体の土地利用計画(POS)で行い、時には第二部3に記した建築・都市・景観遺産保護地区(ZPPAUP)などで補完する必要 があります。

 保存地区国家委員会の評議と自治体議会の審議を経て出される保存地区指定の政令は保存と価値付け計画(PSMV)作成のため の仕様書に当 るものです。保存地区の指定と境界確定の政令が出てから、保存と価値付け計画が出来上がるまでの間、地区内での建設や空間に変更を加える行為(内部模様替 えや樹木の伐採も含む)はABFの許可を受けねばなりません。

6. 保存と価値付け計画の研究
 研究者が、地域の特殊性に応じて独自の方法論を使うのは良いが、都市の形態と用途を切り離さず、保存と価値付け計画の基礎となる都市遺産の詳細な分析を 行わねばなりません。そして価値付けの総体的政策を規定するため、次の点が明らかにされます。

○ 保存地区の大きさと形態に適した都市機能。
○ 住居、商業、交通、運輸の点で周辺地域との関連。
○ 真の経済活性を創出、維持する方法。保存地区にあるべき公共施設、サービス、活動。商業機能の変転の制御方法。

○ 予想される社会変化。特に住居の多様性の維持。この点では自治体との密接な連係が必要。
○ 地域住居整備プログラム、都市移転計画、不動産対策指針、商業発展協定など、主題に応じた方策の取り込み。
○ 不動産修復(PRI)、住宅改善作戦計画(OPAH)、特定目的事業(PST)、不良住居解消(RHI)、商業支持(FISAC)、外装洗浄キャンペーン など、目的を達成するための作戦的、財政的な道具の規定。

●都市遺産の分析;
都市形態の構成と進化。都市形態は単一計画の結果であることはなく、都市の上に 都市を作る絶間ない歴史の産物ですから、事前に歴史的、考古学的な調査が必要です。都市構造、地域適応、道路線形、敷地区画などの構成と進化の知識を深め ることが、都市の現在の姿と発展方向の理解に役立ちます。
建物の分析。まず、保存地区の各建物に付いて、各部詳細と材料(屋根、開口、躯 体、塗装、内部で特徴あるもの)、建設と その後の変更の時期、建物状況、現在と過去の用途を調査、記録します。歴史的方法は追加された手直しの下にある建物の原初の状態を知るのに役立ち、民俗学 的方法は建設に関連する習慣やそこに表現、刻印された知恵を知る上で重要です。
建物と都市総体との関連の分析。均一な全体の一部となり、地区の建築的統一感に 寄与する建物、また、見通しや街区の角など重要な位置を占める建物など、建物相互間や公共空間との関連を、見通し、総体形への寄与、リズムの点で分析しま す。
空地の研究。公共空間としての道路や広場、私有空間としての庭や中庭など、建て られていない空間を尺度、形態、材料、植 物や水面の存在、面する建物との関連、過去と現在での使われ方に付いて研究すること。ここでも歴史的方法が保存地区の公共空間の構成と機能の論理を知る上 で役立ちます。道路線形や見通しは、都市の継続的変化で形成され、農道は中世の小道に、古典時代の整然たる見通しに変化し、古い水路や運河は埋められたり 蓋をされたりしたからです。
●社会経済的分析;遺産の保護だけでなく、それを生かし再生するために、社会経済的分析を都市形態、そこにある慣行、地域潜在 力など、特に下記の点で行います。
○ 保存地区の社会・人口学的状況。
○ 住居。保存地区を総体的住宅ストックの中に位置付ける。
○ 手工業、商業の進化。雇用状況。
○ 施設、公共サービス、交通(接近性、駐車場)に関する地域の要求。

7. 保存と価値付け計画(PSMV)
 上記研究結果は保存と価値付け計画として報告書、図面、規則の三つの文書にまとめられます。

● 報告書。
政策適用の基本的道具として、報告書は研究結果を総合し、出来るだけ分かりやすい方法で保存と価値付け計画の目的とその適用の具体的条件を記します。特に 下記が重要です。

○ 地域の都市史の理解と未来予想に必要な主な要素。
○ 都市空間、建設遺産、考古学に付いての現状と診断。
○ 保存地区の人口学的、社会的与件、住居種類の配分と分布の現状、経済活動と都市機能(共同施設、交通手段、交通、駐車場、歩行者路)の分布現状に関する現 状と未来予想。
○ 都市政策と都市遺産保護に関する保存と価値付け計画の目標方針。
○ 建物遺産の扱いと都市空間の整備に関する保存と価値付け計画内容の正当化。
○ 保存と価値付け計画の目的達成に役立つ、法的、作戦的、財政的手段。
 報告書には自治体の他の部分の現行の都市計画規定、また地域住居プログラムや地域広告規制、整備と都市計画法や環境へ考慮の方策と、保存と価値付け計画 が矛盾しないことを記します。

●図面。
 地域地図で建物を色分けし、凡例ごとに、区画、建物及びその部分、公共空間、庭などに関し、保存と価値付け方法が精密に規定されます。また、地域内で大 きく性格の異なる部分があれば、地区区分が行われます。

 既存建物の色分けは;
○ 歴史建造物として保護される建物、立面、細部。工事には文化省の許可が必要。
○ 保存すべき建物または部分。建物ごとに工事方法の詳細な規定。
○ 改善または建て替えるべき建物。建て替える場合は規則に従う。
○ 取り壊すべき建物。寄生建物で埋まった中庭を解放してブロックの密度を下げ、所謂「掻爬処置」のため、公的、私的な建物の増設や用途変更に際し、取り壊し が義務付けられます。

○ 上階建増し部分などの取り壊し。上階建増し、屋根・開口・バルコニー・煙突・一階の用途、囲いなどの変更で、建築的質が低下したもので、保存や改善すべき 建物の公的、私的な工事の際、義務付けられます。
 新築建物は、地域全体との調和をはかるため、建設敷地範囲、建築線、後退範囲など、 多くの規則に従わねばなりません。
 空地と植生は公共、私有を問わず規則に従います。
○ 指定既存緑地と新設緑地。
○ 特別の規定に従うべき空間。都市構成上重要な部分は、鋪装、屋外施設、植生、駐車場所などが規定され、私的な空間でも都市遺産に関係するものは、周辺の建 物に適した規制が行われます。
○ 公衆に解放された私的通路。ブロックや地区全体の都市機能上必要な歩行者路を規定し、それを塞ぐことが禁じられます。

 予備地が道路、通路、公共施設、緑地を整備するため指定されます。
 地区内区分。地区内で建物が混乱していたり、放置状態にある部分は特別に区分され、 全体と調和した整備が計られます。この部分は、後の保存と価値付け計画の変更時期まで保留されることもあります。
● 規則。
規則は土地利用計画(POS)と全く同じですが、建物配置、建物高さ、外観、空地と植生が特に強調されます。

8. 保存と価値付け計画の実施
 知事の権限下で県当局を通過した研究結果は保存地区地方委員会その他関連ある機関に通知され、次いで自治体議会が審議します。

 保存地区国家委員会の意見を付託した保存と価値付け計画は知事令として公布され、第三者対抗力を持ちますが、次いで公衆諮問 を行い、再度保存地区地方委員会を通過後、自治体議会で審議されたものが最終計画となり、これが保存地区国家委員会によって承認されます。
 保存地区は玄人だけの問題でなく、住民全体の同意と参加がなければ成り立ちません。このため、所有者、権利者、商業者、手工 業者などに対 し、技術、建築、財政的支援を含む宣伝活動が行われていますが、土地を知り、住民と多様な関係を持つ遺産保護諸団体の活動が有効です。文化情報省の建築・ 遺産部門の発意で、保存地区を持つ有志の自治体が「芸術と歴史の町」というラベルの下に、同志を増やして保存地区の質を高めようとしています。このような 地域間協力も非常に大切です。
 保存地区は担当ABFの監視下に入り、全ての工事に彼の同意が必要になります。事業として公共が行うものは、公共施設、近隣 施設、社会的 住宅整備のための建物取得とレアビリタシオンなどですが、このため、公共先買権、保存地指定、不良住宅解消措置、不動産修復などの制度を使うことが出来ま す。私的事業は自発的なものと自治体が提案するものがあり、都市土地協会(AFU)、住宅改善計画化事業(OPAH)、商業・手工業改善刷新計画化事業 (OPARCA)、外装洗浄キャンペーンなどの制度を利用します。
 修復工事の質は保存地区の価値付けの重要な要素ですが、必要な伝統技術には、この五十年間建設で殆ど利用されなかったものが あり、保存計画を実施するには、工事長、建築家、請負、職人などを修復事業者が養成する必要があります。

9. 保存地区内の不動産修復に対する税制優遇措置
 1977年以後、住宅部分の所有者と権利者(最短6年以上)は、不動産修復事業で生ずる損失を、限度なく、総所得から控除できます。公用性宣言(修復の ためのDUP)による公共用途の事業の場合、保存地区とZPPAUP内部では、保存と価値付け計画承認以前でもこの優遇措置は適用されます。

 事業者としては、都市土地協会(AFU)加入の集団叉は個人とし建物を所有する者。自治体、整備公共団体、整備を担当する第 三セクター、HLM(中庸住宅建設組織)、住宅改善や不動産修復を目的とするNPO(PACT-ARIMなど)です。
 この優遇措置が適用される事業は、既存建物叉はその部分の住宅事業と住宅への用途変更事業、ABFにより証明される不動産の 完全修復事 業、保存と価値付け計画叉は修復のためのDUPで課せられた取り壊し工事、またこれに附随する既存建物の屋根や外壁の修復工事であり、単なる建設、再建、 増築工事は含まれません。

II. その他レアビリタシオンに用いられる制度
 レアビリタシオンは保存地区に限られけではなく、広く都市計画事業を貫く原則です。以下に、それに関連する制度や機構を列挙 します。

1.ANAH 
 4.6億ユーロの公共基金の上に作られた住宅改善国家財団(ANAH)はレアビリタシオン事業の補助金支給の中心です。今 回、連帯と都市 再生(SRU)新法に従い、景観再生のために活動範囲を一層広げようとしています。2001年には13.5万戸に対し、一戸当たり工事費の20%に相当す る1.7万フランの補助金を付けました。今後改善すべき住居数は50万戸と言われ、補助対象は都市部から次第に田園地域に移りつつあります。
  補助対象は自宅在住者と住居を賃貸する所有者が行うレアビリタシオン工事で、建物は15年以前に建てら れ今後10年以上 主たる住宅として使用することが条件です。補助率は一般に25%ですが、家賃の社会性(則ち低家賃)や、次に述べるOPAH枠内や特定社会的目的事業 (PST)の場合は割増されます。ANAHの補助金の30%がOPAHに、15%がPSTに出されています。

2. OPAH
 上に述べた住宅改善計画化事業(OPAH)は、保存地区内でも建設推進の大きな道具ですが、それ自身独立に不動産ストックの 改善を目的と し、住居されている住宅のレアビリタシオンと空家を市場に出すことを促進するため、国家とANAHと自治体の協約の上に、住宅改善補助金を受ける住居者や 借家権者の支持で成り立つ協調的制度です。
  事業前研究で、質的量的目標、事業の主題や方法が決められ、事業範囲と補助金給付の目的と額が設定され ます。事業担当組織に 対し自治体が地域のまとめを依頼し、住居調査、広報、権利者との話し合い、各人の事業計画作成、手続き文書の取りまとめが行われます。OPAHは公共と私 人の共同の制度ですが、計画には強制力はあるものの、地域に事業受入れの良好な気分を作る奨励の側面が重要です。
  住宅を規定の家賃とする協約を結ぶ権利者には、通常25〜35%の補助金を、自治体が5%を負担する条 件でANAHが5%割り増し、45%に達します。また借家人が協約を結べば、住宅個人補助(APL)が家主に直接支払われます。
  事業単位は1,000戸程度が最適で、事業期間は3年です。2000年、フランス全体で173の新事業 があり、進行中の事業は692、補助を受ける住宅32,800戸、補助金総額約8億フラン、発生した工事金額は33億フランです。
  また最近は、OPAHの遺産的側面が強調された事業(OPAH ・volet patrimonial)が開始され、地域ごとに、伝統的な建て方や道路線形や景観要素を発掘して、固有の建築・都市遺産の形成を計っています。

  フランスの優れた点は、事業機会に多く施策が同時に行われ、相乗効果が出ることです。次に、上の表にあ る壁面洗浄キャンペーンとショーウインドー刷新キャンペーンを説明します。

3. 壁面洗浄キャンペーン
  1970年代にパリの薄汚れた建物が洗われ、街全体が白く明るくなったように、高圧水噴射による壁面洗 浄はフランスで定 着した事業で、10年ごとに行うことが法的に義務付けられており、自治体が介入し補助金を付けます。それは綺麗にするだけが目的でなく、この作業で汚れに 隠れていた建物欠陥が明らかになり、窓枠などを含めた修理で建物の寿命を延ばすことが出来ます。また建物細部が良く見えるようになり、建築の良さ、時代性 などが明確になり、都市の構成要素が際立つようになります。これはレアビリタシオンの効果を万人が知る上で重要で、街区や個々の建物の特徴を理解し、愛す るようになるのです。「立面(ファサード)無しに都市はない」と言われます。

4. ショーウインドー刷新キャンペーン
  ショーウインドー刷新キャンペーンも上記と同一の線上にあります。商店や事業所の一階は公衆の眼に最も 近い建築部分で、 街区や建物にそぐわしいものでなければなりません。事業者は市役所に技術的な計画に写真を添えて出し、ABFの許可を受けます。工事に公共空間利用が必要 な場合は許可され、工事の結果が届出通りの場合、補助金が下ります。これらの事務手続きは市の商工会議所が代行します。

5. action Façade
 立面行動(action Façade)は住宅外装更新のための補助金で、塗装、石工事、樋、建具、金物などの工事を対象に20〜25%の補助金が付きま す。

6. SPT
 特定社会的目的事業(SPT)では、低所得者の住居を確保し、景観を改善し、地元の建設活動を活性化させるため、主に町や村 の中心部で行 われるレアビリタシオン事業にANAHと県議会が約50%の補助金を支給します。不動産収入に対して税の減免措置もあります。家主に対し県議会が入居者を 保証する協約を結び、家賃補助金(APL)は直接家主に支払われますが、家主は9年間以上家賃を基準以下に抑えねばなりません。

7. RHI
 不良住宅解消(RHI)は不良状態の緊急性が宣言されたものを公共収用して建直す制度で、100戸以下の単位に適し、事業期 間は3〜5年です。この場合、建物は取り壊され再建されるので、純粋なレアビリタシオンとは言えません。

8. PRI
 不動産修復地区(PRI)は保存地区内でのみ設定されます。RHIのように建直すのではなく、修復すべき不動産として市町村 が選んだ地区 です。事業は都市不動産協会(AFU)などの第三セクターが行い、修復すべき不動産を買収するか収用します。収用には知事の公用性宣言(DUP)が必要で す。続けて居住を希望する住人には補助が出ます。これ以前に、調査、基本計画、アンケート、住民の移転など難問があり、以前は建築許可なしの悪質な修復で 利益を得る業者が介入したりしましたが、新しい法律でAFUの検査が厳しくなされるようになりました。公用性宣言(DUP)の付いた工事では、住居者や権 利者の発意に対しANAHと国家の補助金が支給されます。

9. PALULOS
 賃貸と社会的住宅改善補助金(PALULOS)は社会的住宅として低家賃で賃貸される住宅のレアビリタシオンのための補助金 で、30%の補助の外、2〜40%の地方補助金と貯蓄銀行の長期低利融資が付きます。借家人には家賃補助(APL)が行われます。

 10. PA H
 住戸改善補助金(PAH)は低所得者の自宅のレアビリタシオンのためのもので、収入の低さ、定年に達するもの、身障者などに 応じて25%の支給率が割増しされます。

 11.  PACT-ARIM
 不良住宅対策行動計画(PACT)は40年前に出来たNPOで、OPAHなどのレアビリタシオン事業の半数に関係し、事業立 ち上げ、都市計画や補助金事務、工事監理などを行って来ました。